2025.01.10 労働時間のあれこれ~これって労働時間?~

友人「うちの会社って18時が定時なんだけどさ、この前18時から皆でおしゃべりしてたら、つい盛り上がっちゃってタイムカードを打刻するのが19時になっちゃったんだよ。だからその分、残業代をもらえると思ってたらさ、社長が18時より後の時間は残業にカウントしないって言ってるんだよ。これ違法じゃね?だって俺、会社の中でおしゃべりしてたんだぜ?会社にいたんだから、この時間は労働時間だと思うんだけど」

 

もし、こんな友人がいたら、皆さんは何と答えるでしょうか。

この人は「会社にいた時間=労働時間」だと思っているようですね。

今回は、実際のところ「労働時間」ってどんな時間なのかをチェックしていきましょう。

 

 

労働時間とは

過去の最高裁の判決によると、労働基準法上の労働時間とは、

「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」のこととされており、

ここには「使用者の明示または黙示の指示により業務に従事する時間」や「使用者の明示または黙示の指示に基づき、参加等が事実上強制されている時間」も含まれているとされています。

これらは、就業規則等に関係なく、客観的に見て労働者の行為が使用者から義務付けられたものと言えるかによって個別具体的に判断されます。

 

黙示の指示

あまり聞きなれない黙示の指示という言葉が出てきましたが、例を出すと、特に何かの業務をやるように指示していなくても、会社の雰囲気的に帰れない状況などが作り出されていて、定時後も会社に残らざるを得ない場合などです。

会社からすると、「特に指揮命令していないよ」と思うかもしれませんが、帰りづらい雰囲気を作ることで、業務を行うようにプレッシャーをかけていたととらえられるかもしれませんので、注意が必要ですね。

 

「上司が帰るまでは自分も頑張るんだ!」とガッツあふれる従業員もいるかもしれませんが、どんどん労務管理の厳しさ・重要性が増していく現代では、ガッツと同時に効率化や法令順守の意識も合わせて持っておきたいですね。

 

 

よくある質問

これって労働時間なの?それとも休憩時間なの?という質問も多いです。

いくつか例をご紹介していきたいと思います。

 

 

Q.弊社はフランチャイズのコンビニ運営会社なのですが、深夜の時間帯はお客さんもめったに来ません。お客さんが来なかった時間帯は従業員も特に仕事をしていないので、休憩時間ということにしていいですか?

 

→NGです。

最初から休憩時間とされていて、その時間帯にお客さんが来ても他の人が対応してくれるのであれば、本人は自由に休むことができるので休憩時間でOKですが、質問のケースでは、お客さんが来たらすぐにその従業員が対応する必要がありそうです。こういった状況下では、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている」とみなされます。ですのでお客さんが来なくて特に仕事をしていなかったこの時間も労働時間扱いです。

こういった状況が起こった場合には掃除を行ってもらうなど、忙しくない時間帯に行ってもらう仕事が無いか今一度、業務を洗い出しておきましょう。

 

 

Q.早く帰るように指示を出しているにも関わらず、定時後も一向に帰らない従業員がいます。こういう時間も労働時間になるのですか?

 

→ケースにもよりますが、基本は労働時間と扱わなくてOKです。

この質問のケースでは「早く帰るように」会社が指示を出していることから、従業員は使用者の指揮命令で行動しているわけではありません。指揮命令を無視した自分勝手な行動をとっているにもかかわらず、その時間分の残業代を支払うことになれば何でもアリになってしまいます。

ですが一方で、「早く帰ってね~」と言いつつ、とても早く帰れないような業務量が与えられているのであれば、それは実質的に労働を強いているとみなされる可能性があります。こういった場合には先ほど出てきた「黙示の指示」があったものということで、質問の時間も労働時間に該当します。

 

こういった従業員が会社にいるのであれば、まずはその従業員に、その残業時間で行った業務の成果物を出してもらいましょう。

出てきた成果物と要した時間に不自然な部分があれば、しっかりとヒアリングして、そういったことが無いようにしていきましょう。(仕事の進め方を指導する等)

成果物と要した時間に不自然な点が無いのであれば、その人が抱えている仕事を他の人に回すことはできないのか検討して、従業員間の労働時間の平準化を図っていきましょう。

 

 

いかがでしたでしょうか。

労働時間は、形式的なものではなくその実態が重要になってきます。

たとえ行う仕事が無くても、何か指示があれば対応しなければならない状況は「使用者の指揮命令下にある」と判断されやすいです。

 

 

自社の労働時間のカウント方法に不安を感じている方は、ぜひ第一コンサルティングまでご相談ください。