2025.04.25 労災保険・雇用保険の保険料の仕組み
社長「あれ?そういえばうちの会社、雇用保険料とかって納付していないよ。」
お客様がこのようにおっしゃることがあります。
一瞬ヒヤッとしますが、よくよく調べるときちんと納付してくださっていることがほとんどです。
ではなぜ、このような認識の違いが発生するのでしょう。
今日は労災保険・雇用保険の保険料の仕組みについて記載させていただきます。
まず、今回の記事で労災保険・雇用保険をひとまとめに呼ぶときは労働保険と呼び、その労働保険の保険料を労働保険料と呼ぶことにします。
労働保険料は年に1回会社から納付することになっています。
そのため、毎月納付している社会保険料と違って「あれ?納付したっけ?」という感覚になりがちです。
特に労災保険料は100%事業主負担ですので、従業員の給与明細にも名前が出てきません。
納付する時も、申告書の見方は難しいので、自社が納付していないと勘違いしてしまうのも無理はありません。
労働保険料を年に1回納めるときは少し変わった納付の方法が定められています。
例えば令和7年4月1日に会社を設立して、労災保険や雇用保険の適用事業所になったとします。
この時に、事業主は令和7年4月1日から令和8年3月31日までの保険料を「概算」で先に納付するのです。
仮にこの時に算出して納付した概算の労働保険料額が20万円だったとします。
そして時間がたち、令和8年の6月ごろになったとします。
この時、会社は昨年と同じように令和8年4月1日から令和9年3月31日までの労働保険の概算を算出するのですが、それと同時に、今まで概算で申告していた令和7年4月1日から令和8年3月31日までの期間の労働保険料を「確定」させなければなりません。
ここで算出した令和7年4月1日から令和8年3月31日期間の労働保険料「確定」額が18万円だったとします。
この場合、令和8年に申告する令和8年4月1日から令和9年3月31日期間の概算は前年度の確定額と同額の18万円で申告してOKというルールがあるのです。(OKではない場合もありますが、本記事では省略)
このように、令和8年6月ごろに行う年度更新では、既に納付している令和7年4月1日~令和8年3月31日期間の概算分を確定し、同時に令和8年4月1日から令和9年3月31日期間の概算保険料を納付するということになります。
既に納付していた概算額より実際の確定額が少なかった場合、その差額は次の年の分の概算に充当することができます。(還付を請求することもできますが、還付されても結局また納めることになるので、実務上あまり還付請求は行いません。)
つまりこのケースで令和8年に納付する額は、
(既に納付していた概算20万円-実際の確定額18万円)=2万円←あまりなので次年度に分に充当
令和8年4月1日から令和9年3月31日分までの概算:18万円
18万円-2万円=16万円
これが令和8年の労働保険料納付額ということになります。
(※労災保険には一般拠出金というものもありますが、金額がちいさくなることと、ややこしくなるため本記事では省略)
再度まとめると、労働保険年度更新と言われる作業は、過去1年分の概算分と確定分の精算、そして向こう1年の概算の納付を行うことを指しているのです。
※手続き時期は毎年6月1日から7月10日の間とされていますが、曜日によっても微妙に変動することがあります。
先ほど労災保険料は100%事業主負担と記載しましたが、一方で雇用保険料は事業主負担分と従業員負担分に分かれています。
先に従業員負担分まで含めた金額を事業主が立て替えて納付しておいて、毎月の従業員の給与から、立て替えた分の徴収を行っているということです。
労働保険料の申告の時期が近づいて参りましたので、今回のテーマとさせていただきました。年度更新にはここには記載していない細かいルールもたくさんあります。(建設業の場合の申告方法、分割納付が認められる条件等)
ご不明点があれば、第一コンサルティングまでご相談ください。