07
2023年
新年座談会
第一経理グループ
代表 大澤 一弘
株式会社 万代電気工業
代表取締役社長 三角 喜久治 様
株式会社 エアコンサービス
代表取締役社長 苅米 淑子 様
中小企業の人材育成、
社長業について語る
コロナ禍に加え、ウクライナ情勢、円安など、人々の暮らしにも影響を与える出来事が続いた2022年。2023年という新しい年に向けて、第一経理のお客様であり、建設業に携わる2社の社長にお越しいただき、この時代だからこそ改めて大切にしたい中小企業の人材育成や、まだ経験の浅い経営者の方々にも参考にしていただきたい社長業についてお話を伺いました。新年が明るく希望の多いものとなりますよう、願いを込めて新春座談会を開催します。
コロナ禍、ウクライナ情勢、円安…
建築業界への影響は?
大澤 本日は、ようこそお越しくださいました。どうぞよろしくお願いいたします。まずは、貴社の事業内容と自己紹介をお願いします。
三角 万代電気工業の三角です。一般建築電気設備に携わり、民間、公共問わず、電気が関係している工事はすべてやっています。父親である初代が会社を立ち上げ、1990年に私が引き継ぎ2代目です。
苅米 エアコンサービスの苅米です。弊社はエアコンの修理から始めた会社で、その後販売・施工へと進みました。業務用のエアコンを中心に取り扱っています。東京都の要請で留学生を受け入れたのをきっかけに、現在ベトナムに子会社もあります。創業者に子弟がいなかったことから、従業員だった私の夫が2代目を引き継ぎましたが、突然病気で他界したため、今度は私が3代目を務めることになりました。
大澤 コロナ禍、円安、ウクライナ情勢など、インパクトのある出来事が続く昨今ですが、貴社、また業界へどのような影響がありますか?
三角 一般的に建設業は、2021年にはオリンピックがあったことなどもあり、そんなに悪いことはないという印象を持っています。
苅米 今、都内はビルの建て替えも多いですしね。
三角 大規模プロジェクトもあり、その関連の工事が多くなると聞いています。コロナ禍や世界情勢の影響で半導体不足が問題になりましたが、その対策で国内に半導体工場がつくられています。円安が続けば他の業種でも戻ってくる工場があるでしょう。そういうこともあり、2023年も建設業は忙しいと思っています。
苅米 エアコンは、世界的な地球温暖化の傾向で、需要が高まっています。弊社が創業した1963年は、日本におけるエアコンの普及率はわずか2%でしたが、2000年には90%になりました。10年ほど前からは熱中症対策が叫ばれるようになり、エアコンを設置する学校も増えました。省エネ設計はもちろん、コロナ禍の影響で換気機能がついたエアコンもずいぶん出るようになっています。
私たちの仕事は人が宝。人材確保、
人材育成のためにしていること
大澤 続いて、中小企業の命題として人材の確保や育成について、現状やお考えをお聞かせください。
三角 弊社は新卒しか採らないのですが、最近つくづく感じるのは、電気設備工事の仕事を目指す高校生が減ったことです。昔は、工業高校に行けば電気科が3クラスぐらいありましたが、今は1クラスあるかないかという状況です。
大澤 人材確保のためにされていることはありますか?
三角 まずは高校に足しげく通い、パイプを作ること。高校生は大学生と違って自分で企業訪問ができるわけではないので、先生との信頼関係を大事にしています。
苅米 弊社もずっと新卒採用でしたが、なかなか採れなくなっているのが現状です。最近は、ハローワークを通して中途採用の方を採用しています。高校を出て職業能力開発センターで空調や機械の勉強をしてきた人を紹介してもらうこともありますね。今のところ採用には至っていませんが、インターンシップの受け入れもしています。そのうち浸透して採用につながると考え、我慢強く続けているところです。
三角 うちはちょうど今日、地元の工業高校から2名のインターンシップが来ていました。電気工事を目指して来ているわけではなくても、生徒さんたちに電気工事という職業を理解してもらい、社会経験を積ませるという意味で、インターンシップは意味があると思います。
苅米 そういう生徒さんが来ると、社員のみんなも一生懸命教えたりしますからね。
大澤 人材の定着を促す工夫はされていますか?
苅米 まずはお給料の面ですね。若い人たちもいいお給料のところで働きたいじゃないですか。だから、なるべくお給料を上げていかなければと思って、いろいろ考えてやっています。
三角 今一番気をつけているのは、ちゃんと休みが取れる環境づくりです。建設業は、竣工間際の1~2カ月はどうしても拘束時間が長くなるし、休めない時期があるんですよ。いざ入ってみたら全然休めないとなると、やっぱり定着が悪くなります。先輩社員には、新入社員の最初の2〜3年はきちんと休みが取れるよう計らってほしい、と言っています。仕事の面白さが分かってくると自然に「僕も出ます」となるので。
苅米 入って1年ぐらいは、土日など休日出勤せず、休んでもらうように上司が考えています。一方、未消化の休みが溜まると、現場が終わったと同時に1カ月ぐらい休む人もいるんですよ。
大澤 それはすごいですね。では、「仕事が面白くなる」ために、何か仕掛けていることはありますか?
苅米 管工事を扱っているので、国家資格である1級管工事施工管理技士を取るための支援をしています。大学の先生に来ていただいて、資格取得のための勉強会も毎週行っています。その先生は、教えるのがとても上手なんです。以前我が社に5人ほどしかいなかった1級管工事施工管理技士の有資格者が、今では25人に増えたのもその先生のおかげです。官庁の仕事は、そういう資格がないと申し込みができないので、会社としてもすごく助かっています。何よりこの資格を取っておくと、一生身を助けてくれると思います。
三角 私は、「電気工事って楽しい」「自分に合っているな」と思って働けないと長続きはしないので、資格や電気の技術を身につけて、達成感を得てもらうことを大事にしています。自分で施工したものが点灯したとか、モーターがきちんと回ったというのも大事ですし、お客様からお礼を言われることも大事ですね。
大澤 新卒で入ってくる社員の教育はどうされていますか?
三角 担当を決めて、マンツーマンで行います。どんなことでも分からないことは「○○さんに聞いてやれよ」という感じです。教えるのが上手い社員に任せています。また、下請けの職人さんたちも、うちの若い社員が行くと面倒を見てくれます。建設の現場には、そういう次世代を育てようという雰囲気があると思いますよ。
苅米 東京都から空調科の社内職業訓練校に認定されているので、10月の1週間を訓練校の時間に充てて、先輩社員が新入社員に教えることをしています。東京都の職業訓練校にも先生として行っている社員がおります。
大澤 自分の仕事だけしていればいいということではなく、若手を育てるという社員さんがいるというのは、貴重だなと思いますし、財産ですね。三角社長、苅米社長のお話を聞いても、ほかのお客様の話を聞いても、中小企業には面倒見のいい人が必ずいるように思います。ところで、事業承継についてはいかがですか?
三角 今一番の課題です。私も67歳になりますから、70歳ぐらいまでには息子に引き継げればと考えています。うちの株はどこかに売れるものでもないですが、証券にすると税金がガバッとかかると言われて、第一経理さんのお力もお借りして計画を立てているところです。
苅米 弊社は社員持ち株規定があるので、その心配はありません。オーナーが一人で株を持っている場合は事業承継するときに大変ですが、社員同士が自己研鑽し、高みを目指してほしいです。
大澤 第一経理は、中小企業が厳しい徴税攻税で苦しんでいる戦後間もない時代、「納税者の権利の守り手になる」という志を持って設立された事務所です。その「中小企業のよろず相談所」としてのスタンスを受け継ぎながら、踏襲だけに終わらない新しいチャレンジを進めるのが私どもの課題。覚悟と愛を持って、次なる継承者の育成にも努めて行きたいと考えています。
社長業の経験から導き出した、
若き経営者へのエール
大澤 最後に、社長業のさまざまな経験から、若い経営者へ伝えたい思いや、エールをお願いします。
苅米 私は何も分からない状態で社長になったのですが、東京中小企業家同友会という団体に所属し、女性部の方々からずいぶん勉強をさせていただきました。例会の帰り道にはいろいろなアドバイスもいただき、それを会社に活かすことができました。先ほどお話した大学の先生も、女性部の方からのご紹介です。そういう風に、新しく社長になる方は、いい仲間を作ることからはじめたらいかがでしょうか。結局、真面目に仕事に取り組んで、いつも会社のことを考えていると、おのずと道が開けてくるし、助言者も現れると思います。
三角 若い経営者の方は、自分の思いをいかに社員に伝えるかだと思いますよ。私は、一生懸命やっている社員がバカを見ない会社にしたいという思いでずっとやって来ました。会社を良くしようという私の思いを伝えて、みんなの思いも聞いて、今があります。昨年亡くなられた稲森和夫さん(京セラ・第二電電創業者)が、「社長は一番苦労しなくちゃ。苦労したくなければ辞めろ」と言っておられましたが、本当にその通りだと思います。
大澤 私自身、常に社員は家族と同じだと思っています。中小企業に限らず、企業経営には人を思う気持ちがなくてはならないですね。私は、まだ自分の思いを伝えきれていないので、もっと伝えなければと思っています。そして自分の思いを伝えると同時に、社員を思うことも大切ですね。私は第一経理の6代目です。まだ代表取締役1年生ということで、今日のお話の中でお二人の社長から私がエールをいただいたように思いました。
三角 中小企業の経営者は、確かに大変です。
苅米 この歳まで働けたのは、幸せだと思います。喜んだり、悲しんだり、いろいろなことがあるけれど、社員は自分の子どものようなものです。
三角 苅米さんが先ほど言われた通り、真面目なのが最後は勝ちですよね。やはり、コツコツ真面目にやらないと、急には変わらないですから。特に中小企業は、真面目にやった人が最後に生き残るんじゃないかな。私はそういう気がしますけれどね。
大澤 経営者は孤独だと言われることもありますが、第一経理を通してお客様同士が友だちになって励まし合える環境をつくっていただけるよう、今後も交流の機会を増やして行きたいと思っております。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。
1965年創業。一般電気設備工事、情報通信設備工事、防災設備工事、計装・プラント設備工事、環境設備工事において、システムの提案からメンテナンスまで行う。「企業は人なり」の考え方を基本とした人を生かし、人を大切にする精神のもと、安全で快適な電気設備をタイムリーに提供。
株式会社 万代電気工業
埼玉県さいたま市桜区中島2-22-1
https://bandaidenki.com/
1963年創業。エアコン・空調設備の販売や設置工事はもちろん、衛生設備工事やフロンガス充填・回収、また住環境に関する総合的な業務を行う。「空気を守ることは、住みよい未来を築くこと」をモットーに、有資格者を多数擁し、確かな技術力で持続可能な社会を目指している。
株式会社 エアコンサービス
東京都港区三田1-4-28 三田国際ビル1階
http://www.airconservice.co.jp/